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Scene.20

LIFESTYLE INTERVIEW #7

YASUYUKI KITA

基準を、静かに引き上げる。
— KWDとMBSが続けるものづくり Vol.2

前編では、KWD立ち上げ当初の想いや、Green Down Projectで培った“続く仕組み”への視点、そして「新しさ」よりも「基準を更新できているか」を問う姿勢について伺いました。
後編では、チームづくりや役割の距離感、20代の自分への言葉、そしてこれからのものづくりへ。
思想がどのように“人”へとつながり、未来へ続いていくのかをお届けします。

一人ひとりが、“自分ごと”にできるブランドへ。

新たなメンバー構成でKWDのチームづくりが進む中で、いま大切にしていることは何ですか?

いま大切にしているのは、一人ひとりが“自分ごと”にできる強さです。ブランドは、誰か一人が頑張って回すものではない。関わる人の数だけ熱量が生まれ、その熱量が積み重なって、初めて強くなっていくものだと思っています。だからこそ、河田フェザーの皆さんにとっても、僕らMBSの新しいメンバーにとっても、まずは自分や身近な人に自信を持って勧められるブランドでありたい。
「これは本当にいい」と言える品質があって、そこに誇りが持てること。その実感が、結果的にお客様にもきちんと伝わっていくはずです。
いま進んでいるリニューアルの動きも含めて、企画としてとても良い流れが生まれている感覚があります。この勢いを一過性で終わらせず、チームの力として定着させること。それが、これからのKWDをさらに強くしていく鍵だと思っています。

前に立つ覚悟と、裏で整える責任。

表に立つことも、裏で支えることもある立場として、意識している距離感や役割はありますか?

僕の中で「表」と「裏」は、役割が少し違います。ひとつは、自社の事業を進める立場として前に立つ“表”の自分。もうひとつは、MBSとしてブランドの現場に入り、裏側から支える“裏”の自分です。
MBSのブランディングは、外から助言するというより、ブランドのアイデンティティの一部になることだと思っています。臓器や細胞のように、目立たないけれど、機能として確かに存在している。
その距離感で、企画や言葉、判断基準を整え、ブランドが迷わず進める状態をつくる。本来は、その立ち位置のほうが自然です。
一方で、自社のチャレンジでは、自分が前に出なければ始まらない場面もあります。その責任は引き受けたいと思っていますが、正直に言うと、前に立つことが得意かというと、そうでもない。
だからこそ、必要以上に目立つのではなく、前に出るべき瞬間を見極めて、そのときだけ覚悟を決める。そしてまた、裏側に戻って整える。
表に立つことと、裏で支えること。どちらが上という話ではなく、役割が違うだけ。どちらも、“ブランドを生かす”ための仕事だと思っています。

急がなくていい。でも、芯は曲げるな。

20代の自分に、今の自分が伝えたいことはありますか?

「急がなくていい。でも、芯は曲げるな」と伝えたいです。
20代の頃は、いくつもの仕事を兼任し、とにかく前に進むことに必死でした。
遠回りも、たくさんしたと思います。でも振り返ってみると、その“遠回り”の時間の中でも、何を大事にしたいのかだけは、曲げずにいられた。
それが、いまの自分を支えている気がしています。
もうひとつ伝えたいのは、小さな世界や視野の中だけで判断しないこと。
違う業界や職種の人と出会い、対話し、交流し、リスペクトを忘れない。その積み重ねは、きっと遠回りではない。むしろ、あとから効いてくる“基礎体力”になると思っています。
成果を急いで、自分を雑に扱わないこと。生活を整え、人を大事にし、その上で作りたいものを作ること。
結局、それがいちばん強い。いまは、そう思っています。

“見えない価値”を、静かに積み重ねていく。

これからKWDやMBSとして、どんなものづくりを続けていきたいと考えていますか?

KWDのコンセプトである Transparency は、「見えること」だけの話ではないと思っています。
本質はむしろ、見えない部分に宿る。素材の中身や、縫製や仕様、つくり手の誠実さ。そうした部分にこそ、ブランドの価値はある。
その価値をきちんと理解してくださる、心が豊かなお客様を、これからもっと増やしていきたいと思っています。
そして同時に、その価値を“続けていける”チームを育てていくこと。いいものを一度つくるのではなく、いいものを作り続けられる状態をつくること。それが、次のフェーズだと感じています。
派手ではなくても、確実に残るもの。作り手も使い手も誇れるもの。生活者の基準を、静かに引き上げていくプロダクト。その積み重ねを、これからもKWDとともに続けていきたいと思っています。

喜多泰之 / YASUYUKI KITA

大阪府出身。アパレル一家に生まれ、幼い頃からインポートの洋服や文化に囲まれて育つ。大学在学中に大手セレクトショップを経験後、新卒入社。PRやバイヤー、フェス企画など複数ポストを担い、環境・社会課題に向き合う新規プロジェクトも多数推進。2019年にソーシャルクリエイティブカンパニー「株式会社MILKBOTTLE SHAKERS」設立。Green Down Projectでソーシャルデザインディレクターを務め、2021年に「Loopach」をローンチ。

Instagram : https://www.instagram.com/milk_no_kita/